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HAGIBLOG

自転車とお菓子作り

男鹿半島 127km(ツールド東北 2)

東北 自転車 自転車日記

20130804

 

2日目の朝、6時に起きた僕はそそくさと歯磨きと着替えをして日焼け止めを塗ったあとでチェックアウトを済ませた。入り口の脇で自転車を組み立て、2Lのペットボトルから水をボトルに補充する。エネルギーバーをもぐもぐ食べて、空を見上げる。晴天。朝から日差しがじりじりと照りつけていた。

まずは北へ向かって走り出す。いやあ、さすがに200km分の疲れは抜けきらない。疲れ、というか痛み。乗りはじめからお尻が痛い…!

秋田ポートタワーセリオンを通り過ぎ、海沿いのまっすぐな、なにもない道を走る。平坦なスプリント区間だ。だんだん調子が乗ってくる。ペダルを踏めば踏むほどスピードは上がって、ああ気持ちがいいと思ったのもつかの間、まっすぐ過ぎて変化のない道にすぐ飽きた。

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このまま海沿いを走って、本日の舞台、男鹿半島へと向かう。

するといきなり巨大ななまはげ像がお出迎え。観光客が次々やってきて、このなまはげと同じポーズで写真を撮っている。端で見ているとおもしろい。

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気がつくと半島に入っていた。もう30kmほど走っていることだし休憩もとらないと、ということでコンビニ休憩。おにぎりと野菜ジュースをとる。コンビニを出て少し行くと、後ろからいかにも走りそうなローディ2人組がやってきた。なんなく抜き去っていく。うーん、このお尻の痛さでは追っていく気にもならない。

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鵜ノ崎海岸。キャンパーたちが多数。

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ゴジラ岩、は素通りしてしまったが、岩場に降りていくと、まんま怪獣のような岩が現れるらしい。

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ここまでは海岸沿いの平坦な道をらくらく気持ちよく走っていたが、そのうち坂道に差し掛かった。と、そこになまはげ像が再び登場。ババヘラアイスを買って小休止。

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ここからアップダウンの激しい道が続く。海岸沿いというより断崖沿いのような道。こんなアップダウンもぐいぐい踏んでいく脚力があればさぞかし気持ちがいいのだろうが、秋田市内からここまで来ただけでもう体力に余裕はなし。山を越えるのでもない、ただ海岸沿いに半島を回る道がどうしてこんなにつらいのか!

時折、車が追い抜いていく。後部座席の子どもがこちらをおもしろそうに見ていたり(笑っていないで飲み物かババヘラを手渡してくれ)、オープンカーのおっさんが手を振ってくれたりした(登りに強い極上ホイールを出してくれ)。

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男鹿水族館GAO

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また海水浴場があった。のんびり楽しそうな雰囲気だなあ。この砂浜を通り過ぎると、ほどなく道は海岸から離れ、登り坂へ。場所によっては、えっ、と疑いたくなるほど登りがキツい。ふらふら。

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疲れと暑さで、まるっきり集中力を欠いていたと思う。緩やかな下りは、とにかく休みたかった。ちらっと前を見て、しばらくまっすぐだと見てとると、顔はもう下を向いて流れるままにしていた。

それで、ふらっと左に振れたのだ。草むらに突っ込みそうになった。焦ってハンドルを戻そうとしたときには、タイヤはアスファルトから外れていた。段差にタイヤが引っかかり、落車ーー。

路上に投げ出された。その瞬間、痛みというより、アスファルトの固さと熱を感じた。立ちゴケとは比較にならない衝撃。ああ、やってしまったなーと思う。立ち上がっておそるおそる自転車を見てみる。前輪が回らない。ハンドルバーが曲がっている。前輪は、ブレーキがよじれてタイヤに押し付けられていた。手で戻してやると直った。ハンドルバーは曲がっているのでなく、レバーの持ち手が曲がっているだけのようだ。なんとか走れそうだ。変速も問題ない。

あらためて自分の体を見てみると、すり傷があちこち。肩と腰がひどい。レーパンとジャージに穴が空いていた。レーパンの穴は痛々しいというより変態っぽい感じなので、下は短パンを履いた。

しかしこの程度で済んでほんとうによかった。スピードが出ていなかったのが幸いだった。というか、スピードを出せるくらいの元気があったら、たぶん転んでいない。まるで転びようのない場所だったですよ…。

 

ともかくも半島の末端、入道崎を目指してゆっくり移動を再開する。待っていても極上のカーボン・バイクに交換してくれるチームカーは来ないのだ。やれやれ。だんだんとけがの痛みが感じられてくる。

入道崎へ着いた。ああ、到着の記録写真だけさっさと撮って休もうと思っていたら、気のいいお兄さんがニコニコして近づいてきた。「写真撮りましょうか?」 あのさ、さっきものすごい勢いで転んだんですよ、ほら、ひざから血も出ているし、写真どころじゃないんですよ。…なんてことは言わず、勧められるままに写真を撮ってもらった。

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入道崎はもっとも観光地っぽいというか、観光客向けの土産物屋が立ち並んでいる。そのうちの一軒に適当に入り、海鮮ラーメンを食べた。おしぼりとティッシュで血を拭いた。

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また走り出す。走るよりしかたがない。転んで怪我した痛みより、昨日から蓄積されている疲労で走るのがつらい。満身創痍。残る力を振り絞って最後の目的地、寒風山へと向かう。予定では県道55号線を行こうと思っていたのだが、後で確認すると「なまはげライン」を通ってきたようだ。なまはげ館へ向かう道もあったが、時間的にも体力的にもとても立ち寄れない。

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さて、いよいよ寒風山の登りに入った。ところが登っているのに灯台のある頂上に近づいている感じがしないのだ。あれ、もしや道を間違えて別の山を登っているじゃないか。と思っていたら、なんと一度登ってから下り、さらに登るという…。

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いや、そこまで標高があるわけでもないし、たしかに景色もいいし、体が大丈夫だったらすごく気持ちいい登りなんだろうけどね。いまこんな状態では泣くしかないような仕打ちだ…。この寒風山、「秋田のモン・ヴァントゥ」と呼ばれているかどうかは知らないが、どことなく「魔の山」の雰囲気が感じられる。歩くような速度でえっちらおっちら登る。

頂上に到着した。遠く秋田市まで続く、弧を描く海岸の地形が見えた。展望台の方からは、先ほど苦労して登った、蛇のようにぐねっている道が見える。すばらしい。こういった道を俯瞰して眺める景色が好きだ。

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道を眺めてなにがおもしろいのかというと、その地形に引かれる一本の線が、いろいろと感覚に働きかけてくるように感じるからだなあと思う。自分の身体が記憶している、あれこれの感覚が再生成されるというか。ツールの空撮の中継などで、選手が山岳でも平地でも道を疾走していく様を見ると身震いするほど感動する。でもやっぱり、こうやって自分が走ったばかりの道を俯瞰できるというのは何にも増してすばらしい。

空の視点から見た、その地形の上に引かれる線のあり様というのが、いま僕の目に入るもののなかでいちばん魅了されるものかもしれないと思う。

 

すべての任務を果たした気分。山を下ったら、すぐ近くの駅からもう電車に乗ってしまおう。当初の予定では秋田駅から乗る予定だったが、秋田まで行くのは無理。

というわけで脇本駅に着く。時刻表を見ると、次の電車まで2時間近く待たないといけないとか…。これだったらゆっくりでもチャリで行った方が早く秋田に着くじゃないか。もう少し先まで自走するか…。(ここで間違えてガーミンをリセットしてしまった…)

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なんとか追分駅までたどり着く。ここを本日のゴールとしよう。走行距離127km。

輪行体制を整え、電車に乗り込む。

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秋田駅で乗り換えに一時間ほど。時間つぶしの読み物と弁当を買う。駅の構内にもなまはげがいた。

奥羽本線で新庄へ。新庄でも乗り換えに一時間ほど待つ。接続がよろしくない。新幹線には合わせているようだが、在来線はまるでダメな路線である。電車内は冷房が効きすぎていて寒くなってきた。ウインドブレーカーを着ても寒い。寒気がする。だけどそれでも冷めない興奮がどこかの奥の方にあって、それはすり傷がジンジンと痛むのに伴って体中に波紋を広げているかのようだ。ああ楽しかった。

男鹿半島はほんとうによかった。観光地としておもしろいということではなく(もちろん観光地としてもおもしろいが)、ロードバイクで走るコースとして道それ自体がおもしろい。こけたのはまあ痛恨の極みだとしても、それにしたって、よかったと思う。

 

山形に着いたのは10時過ぎだったか。家に帰り風呂に入ると、擦り傷がしみまくって気絶しそうなくらい痛い。

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