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HAGIBLOG

自転車とお菓子作り

東京、雪、何もみえない

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どういうわけか上野のホテルは軒並み満室でどこにも部屋が取れず、深夜にiPhoneで電話をかけまくってようやく見つけた浅草のカプセルホテルに向かうために乗ったタクシーの運転手は、明日というか今日の3時から大雪になる、電車が止まったらバスで行くといい、上野駅に行くバスがあるから、しかし山形新幹線も雪に強そうで弱い、などと言っていた。隅田川沿いのホテルの9階にある浴場から外を見ると、雪が降りそうな感じもしなかった。カプセルに潜り込んでテレビをつけてみたりしたけれど、疲れていたのですぐに眠りについた。少しして目を覚ますとテレビではオリンピックの開会式をやっていて選手が入場しているところだった。マスコットの大きな熊が、リアルなのか嘘くさいのかよくわからないちょっと不思議なふうに動いているのを見た。また眠った。

朝起きると、雪がうっすら積もっていた。日帰り出張のはずが急遽終電まで帰れなくなったから投宿しただけで、土曜日の今日は仕事でもなんでもない、ただ山形に帰るだけなのでどうせなら観光してから帰ろうと思った。

 

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観光だったらいつもの生活と違うふうに、いわゆる非日常という感じで過ごせればいいのだが、雪が降っている空はまるで山形みたいな感じだと思った。すぐ近くにスカイツリーがあるはずなのだが、霞んでほとんど見えない。もっと近くに寄れば見えるのかと思ってそちらの方に歩いて行った。見えない。

中に入った、中に入ってしまえば、とうぜん、外観は見ようがない。上までのぼってみることにした。内から外へ。今度は外を見てみよう。しかし、外からは見えなくてどうしてその逆からだと見えようか、これも、とうぜん何も見えない。見えないということを見るためにのぼったようなものだ。コーヒーを飲んで、下に向かうエレベーターに乗った。

 

とうきょうスカイツリー駅から一駅電車に乗って、浅草駅から、浅草寺を見にいった。雪が降るなか浅草寺をお参りするなんてたぶん滅多にない、多少はそこに風流なものを見い出してみるのがいいのだろうか。それにしては降り過ぎか。ますます地元にいるような感覚。

人生がうまく転がっていくよう、お参りを済ませて、おみくじを引いた。凶だった。「何をやってもダメ」「良いところが一つもない」というような身も蓋もない文言が記されていたため、たいへん暗い気持ちになった。慰めの言葉がまったくないために、かえって信憑性のあるおみくじのように思われた。先は真っ暗、あるいは真っ白だーー今日の地上350mの眺望のようなーーということが知れた。

 

雷門をくぐって、合羽橋に歩いていった。「かっぱ橋道具街」は調理器具を扱う専門店が立ち並ぶ、知る人には有名な商店街である。それは好きな人だったら見ているだけで楽しめる、といったたぐいの場所であるはずが、それほど心が躍らなかった。雪もだんだん激しくなってきており、吹雪の様相を呈していたからだろうか。寒い。

 

上野に。国立西洋美術館でやっている「モネ、風景をみる眼」展を観にいく。こんな雪だから新幹線が動いているうちにさっさと帰ればいいのだが、可能なかぎり観光を遂行しようというのがおのぼりさんの心性。

そういえば久しぶりに絵画というものを観たような気がした。ここでも何もみえないという畏れ。「目に過ぎないけれども、なんてすばらしい目だろう」と言われたモネも言ったセザンヌも、その目にはどんなに豊穣な光を捉えていたことだろうか。

美術館をあとにして駅に向かうと、あんのじょう新幹線には遅れが出ており、駅の構内の改札を通ってホームへ向かう途中のベンチに座っていつ動くとも知れない新幹線を待つあいだ、時間つぶしに触っていたiPhoneもバッテリーは切れ、昨日から尾を引く仕事疲れなのか今日の観光疲れなのかやがて迫ってきた眠気には抗おうともせずうとうととし視界は再びホワイトアウトした。

 

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