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HAGIBLOG

自転車とお菓子作り

蔵王ヒルクライム2014

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5月18日日曜日。蔵王ヒルクライム大会当日。早起きできるか心配だったけど、なんとか起きれた。少し余裕もあったので、ご飯を炊いておにぎりを握った。コーヒーも淹れた。コーヒーはふた付きのマグカップに入れて持って行った。車を運転しながらおにぎりを食べた。天候は、山形も宮城も曇りだった。

6時ころ会場の駐車場に到着。すでに到着している選手がローラーを回していた。ぼくも着替えをしたり、ロードバイクを準備したりしつつ、昨日買ったまんじゅうを食べ、ゼリーを飲み、バナナを食べたりした。

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この大会が自分にとって初めてのヒルクライムレースだ。いろいろと予習不足でわからないことが多い。たとえば、補給はどうすればいいのだろう。途中で食べたほうがいいのか、一気に登ったほうがいいのか。どちらが正解かわからないが、途中では何も食べないことにした。まんじゅうを1個だけポッケに入れて、ゴールしたら食べることにした。

パンク修理セットは…? ヒルクライムにおいては軽さが最大の武器だ。本気でタイムを狙う選手は持たないのだろう。でも、ぼくのような完走を目指すくらいの人間は? 迷ったが、パンクはしないだろう、最近してないし…という楽観的見地から置いて行くことにした。

さあ、少しアップをして、体を温めておきたい。バイクにまたがってスタート地点まで行くと、鳥居をくぐって山に登っていく人がちらほらいた。ぼくも試走がてら山に向かってみる。序盤は高い木々に囲まれた、薄暗い道が続く。空気がひんやりとしている。ちょっとお腹が苦しい感じがある。先ほど、少し多いくらいにものを食べたためだ。寒さと胃の重さが混じり合って、なんとも晴れない気分…ようするに少し緊張していた。

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開会式。司会者も大会の会長も、「山頂はとにかく寒い」「風も吹いている」「視界もたいへん悪い」「路面は濡れていて滑る」などと非常に不安にさせることばかり言っている…。「昨晩はみぞれが降って樹氷ができているほどだ」「とにかく無事に帰ってきてくれ」

樹氷だって? 季節が違うだろ…大丈夫か本当に…。

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Let it go

風が心にささやくの このままじゃだめなんだと

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ぞろぞろと鳥居前に移動して、チャンピオンクラスからスタート。 Aクラス、Bクラスと順番にスタートしていく。

そして時間が来た。ぼくのいるCクラス2回目のスタートである。タイムは計測チップで一人一人計測されるので、見苦しい場所取り争いのようなものはなかった。1分前、ウィンドブレーカーを脱いで背中のポッケに入れた。10秒前からカウントダウン…。7時36分。号砲がなった。

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いよいよ始まった。序盤は密集しているので慎重に。楽に走ること。無理をしないこと。足を使わないこと。完走を目指す、などと言ってはいるが、正直、完走はできると思っていた。トラブルさえなければ。機材の故障や体調の激変さえなければ、楽にとは言わないがまちがいなくゴールにはたどり着く。だから、周りがどんなに速くても自分のペースを守ることだ、などと自分に言い聞かせて走っていると…、目の前を「苦行」が走っていた。

背中に「苦行」と書かれたジャージを着た選手だった。嫌なジャージを着ていやがる…。何もこんな時に、私の人生観を…。堪え難い苦痛、逃れられない苦悩…。何もレースの最中に思い出させなくてもいいじゃないか! やけになって、さっき言い聞かせたばかりの自制心もどこへやら、思いっきり踏んで前に飛び出していた。

そうしたら…あれ、と気がついた。あんがい足が軽い。あんがい呼吸が楽。消化も進んだようでお腹も苦しくない。もしかして、今日は調子がいい。いける。楽しい山登りの始まりだった。少なくともヒルクライムは苦行ではないことを思い出した(苦しいけど)。

 

「苦行」を飛び越えたら気持ちが楽になった。どんどん前に行けそうな気がする。なんか走っている最中はとても流行っている映画の歌がエンドレスリピートしていた。脳内で。

悩んでたことが嘘みたいね だってもう自由よ何でもできる

そうだ、自転車の上では、自由なんだ。何でもできるんだ。完走などといわず、全力で走りたい! 飛び出したそのスピードで走り続けた。

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新緑の木々に囲まれた薄暗い区間を越えた。それでも上空には雲が鎮座していたし、路面は黒く湿っていた。雨粒が落ちてこないだけ幸いだった。

最初の給水地点を越えた。この天候ではそれほど水は飲みたくならないが、水分は摂っていたほうが良いだろう。自分のボトルで給水。いつもはケチって薄く作っているドリンクも、今日は濃く、というか決められた分量で作った。

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一瞬、光が出てきた。と思ったら、すぐ雲に隠れた…。より風が強くなってきた。霧が風に流されているのが見えた。ひっきりなしに脚を回して発電機のように熱を生み出しているはずなのに、その熱がすぐ冷まされていく。高度が上昇するにつれどんどん気温が下がっていく。レリゴー!

どこまでやれるか自分を試したいの そうよ変わるのよ私

00380017 時折、すごい速さで追い抜いていく人がいた。後からスタートした人なのだろう。後からスタートということは年齢が上のクラスである。40代、50代の人なのだろうが、そんなお年でもこんなに速いのか。さすがベテラン、レース展開が狡猾というか、トレインを形成して一気に登っていく。ぼくにはそのトレインに乗って行けるほど脚力はなかった。それでも頑張って追いかけた。

全体としては、抜かされるよりも多く抜いていくペースで来ていた。

給水地点。残り5km。

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雪壁が出てきた。写真を撮るのは、つらさを紛らわす手段である。しかし指先がやばい。手の感覚がなくなってきた。

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霧は徐々に濃くなっていった。10m先が見えない。霧に雪壁の輪郭が溶け込んでいく。風がやばい。もはや、つらいのか苦しいのか、冷たいのか痛いのか、なにがなんだかわからない。自分の全身の感覚も霧散していく。少しも寒くないわ〜。

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料金所を越えた。未体験ゾーンに突入。突風に押し返される。持てる力を振り絞って突き進む。あとどのくらい? 何キロ? 何メートル? どこを走っているのだろう…。そして、霧の中へーー

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何も見えなかった。そこは駐車場だった。係員がレストハウスに入れと言っていた。 ゴールしたのだ。体がぶるぶる震えていた。

レストハウスには入らなかった。呆然としたまま、ふらふらとお釜を見にいった。何も見えなかった。誰も見に来なかった。杭が凍りついていた…。

ありのままで空へ風に乗って ありのままで飛び出してみるの

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下山

ありのままというか、非現実的感覚のままお釜を見に行ったり外でうろうろしていたら体がばかになった。寒くないわけなかった。しばらく体の震えが止まらなかった。レストハウスのストーブの前、放心状態でじっとしていた。天候で山頂はこんなにも違う。ああ、山をなめていましたよ。前に晴れていた日に登ったのと同じつもりで来てしまった。軽装で山に入って遭難するタイプ。

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困ったことになった…。下山は複数回に分かれて集団で下りることになっている。ウィンドブレーカー1枚で下山とかまじ無理、指切りグローブとか指先が凍えてまじ危険、これは下りられないんじゃないか…。周りを見ると他の人はちゃんとバスに荷物を預けていて、上下厚着をし、下山の準備を整えていた。

しかしまあ、ストーブの前に1時間ほどたたずんでいたら、なんとか回復してきたので、思い切って自力での下山に踏み切った。出発時間ぎりぎりまで中で待機し、アナウンスと同時に飛び出して集団の最後尾で下った。手と腕がこわばって恐ろしかった。足より腕が筋肉痛になるんじゃないかと思うほどブレーキをかけながら下山した。

これは次回への教訓としたい。ちゃんと荷物を預けること。備えあれば憂いなし。

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山から下ると、そこは平和な世界だった。完走証と豚汁をもらった。

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終わった。表彰式やら何やらがあったが、ぼけっとして眺めていた。一位の人は、どこかで見たことのある人だった。表彰台というのはまるっきり別次元の話なのだが、その華やかな別世界を眺めつつ、ぼくはひそかに満足感に浸っていた。完走が当初の目標ではあった。でも本当にゆるゆると完走しただけだったら、「寒かったけど楽しかったです」みたいな楽しさ捏造記事を書くだけになっていただろう。そうではなく、全力を出したことが、やり切って終わったことが、うれしかった。

1時間24分08秒450(Cクラス61位)

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