HAGIBLOG

自転車とお菓子作り

津軽半島(ひとりぼっちのツールド東北 4)

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9月15日月曜日

朝5時、日の出とともに出走した。早朝の時間に走ることの気持ち良さは筆舌に尽くせない。路上は静謐であり、空気は澄んでおり、光はしっとりと清らかである。早朝に乗ることと昼に乗ることでは、同じ自転車でもまったく別ものの体験のようだ。朝の時間がこんなにもすばらしいと、それが分かっているのにどうして普段から早起きできないのか…。

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朝日を真横から浴びる。ここは農道なのだろうか、ひたすら一直線の信号もない道を快調に飛ばす。

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スタートしてから一時間とちょっと走って、十三湖へ到着した。山の中に湖沼が点在する十二湖とは違い、こちらはだだっ広い湖である。体が暖まってきたのでウィンドブレーカーを脱いだ。

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ちょっとした丘を越えてほどなく海岸へ。ライオンのモニュメントが妙な存在感を放つ橋を渡り、さらに先へ先へと進んで行くと、ありゃりゃ、全面通行止め! どうしよう、迂回路なんてないんじゃないの? …と焦ってiPhoneで確かめてみたら、どうやら道を間違えたらしい。ああ、よかった、竜飛崎まで行けないのかと思った。引き返して、ルートへ復帰。

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しばらく進んで行くと、前方に急斜面。見るからに登っていく感じ。予備知識として、竜飛崎の前に登りがあるということは知っていたが、どうやらここかららしい。

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12%だそうです。

オートバイと車が何台か抜いて行った。道端で農作業か何かしていた人がこちらに気づき、ニコニコしながら「こっからキツいぞ!」と言った。

けっこう登るんだな…。400mアップくらいだろうか。なんとか登りのピークに近づいた。展望台から誰かがこちらを見ている、のが見える。ああ、先ほど抜き去って行ったバイク乗りの人たちか。「あ、さっきの奴が来たぜw」とか言われてる気がする。知らないふりをして、苦しくないふりをして登って行く。

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展望台の駐車場に着いて、「あ、どうも」みたいな感じであいさつすると、「すげえなあ」とか「よく登れるなあ」というような賞賛の言葉をいただいた。まあ、自転車で山を登っていると非自転車乗りによく言われるようなことである。

それはともかく、たしかにここからの眺めはすばらしかった。いつまでも下界を眺めてしまうのもよく分かる。山形だったら山に登って見えるのは隣の山くらいであるが、こちらは空と海とが見える。なんとなく天空の城的というか、そんな感じの景色の見え方が本当に良かった。 

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ここから下っていった先が、ようやくたどり着いた、津軽半島の最北端・竜飛崎であった。津軽海峡の向こうに見えるのが北海道だろう。

展望台では空の何かを見ている人たちがいた。つられて空を見上げてみたが、何も見えなかった。ヨンニッパ(かそれ以上の)レンズにD一桁のボディ、そんな高級機材を通してしか見れないものもあるのだろう。それと同じく高級フレームに高級ホイールでしか到達できない境地というものがあるのだろうか。

ともかくも、気がつけば5年目のロードバイクでここまで来た。ではいったい、自分は何を見に来たのだろう? 海を? 北海道を? 北の外れを…?   

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津軽海峡冬景色」を聞きつつ、ぼんやり考えてみたけれどもよく分からないまま、時刻は9時30分を回っていた。道を間違ったり坂に苦戦したりで、予定より少し遅くなった。希望では、青森駅に1時に着けばいいと思っていた。しかし、いまからその時間に間に合わせるには、残り80km一本勝負みたいなハードな走り方をしなければならない。それも元気なうちならなんとか行けるかもしれないが…いまの状態では無理。

そんなわけで電車の時間を遅らせることに決定。時間に少し余裕ができたので、気持ちを楽に、焦らず行こう(といっても、帰りの時間が遅くなるだけで余裕ができたわけでもないが)。

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岬を後にして先へ進む。さっきのバイクの人たちがまた追い抜いていった。抜き際に手を上げてくれた。

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今別のあたりで「青函トンネル入り口」という案内が出ていたので、ちょっと立ち寄ってみる。

手前には朽ちた草間彌生のオブジェみたいなベンチが。青函トンネル入り口といっても、見た目は特別というわけでもなく普通のトンネルなのだったが、他に2人ほど見にきていた。そこにあった時刻表を見てみると、あと数分で電車が通るらしい。

来た。ぱちり。

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続いて高野崎へ。ここでもまた先ほどバイクの人たちに追いつく。もう会うことはないだろうと思っていたのに、行く先々でまた会ってしまう。なんとなく気まずい。

売店で「食事できますか?」と聞くと「できますよ」とのこと。ここで昼ご飯を食べていこう。刺身定食に若生おにぎりを追加で。

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津軽半島も3分の2を過ぎた。コースプロフィールをよく予習していなかったけれど、どうやらもう登りもなさそうだ。道はほぼ平坦。にもかかわらず、巡行速度も上がらなくなってきた。脚さんが言うにはそろそろ限界だそうです。

今さらながら分かってきたのだが、このBMCのSL01というフレームは、やっぱりけっこう硬いんだと思う。アルミだし。踏めば踏んだだけスパッと応えてくれるのだけど、踏めなくなったらツラい…というか、どちらかといえばレース寄りのフレームなのだろう。脚の消耗も激しいし、ロングライドにはどうかなあ…と貧脚を棚に上げて…。

そしてこの辺り、住宅地っぽい単調な道が延々と続いていて、とくに景観が癒してくれるということもない。背中を反らしたり伸びをしたり、ストレッチをしながら体の痛みをごまかしごまかし、走り続ける。

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今度は乗り心地がいいのが良いかな。レースに出るわけじゃないし。とはいえ、一時間で脚が売り切れてもいいから、全力を振り絞って走ることの気持ちよさも分かるし…。用途に応じたバイクを3台くらい所有する経済力、そんなものがあればいいのに、と思う。けれども、ただこうして体の痛みを感じながら走ることはまぎれもなく生きていることの実感でもあるわけで、それで充分だとも思う。

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やがて青森市内へ。ベイブリッジを渡り、ちょっと青森港を眺めた。何かのイベントがあったのか、人が大勢いた。天気もよく、清々しい。いやあ今年は無事にゴールできてよかった。(去年はコケた)

そして青森駅。午後2時過ぎ頃到着。駅前で自転車をバラし、輪行体勢を整え、次の電車を待つ。駅のベンチで一眠りしてしまった。奥羽本線の特急で秋田まで。秋田駅に着く頃は、すっかり短くなった日も落ちきって、あたりは暗くなっていた。

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