HAGIBLOG

自転車とお菓子作り

ラフランスのタルトと失われた時間

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ただひたすら暗く淀んだ曇天というのが、この時期の山形の決まった空模様であるようだった。寒かったが、厚着をしていれば耐えられないほどではない。本格的な寒さはまだこれからなのだ。厚着をしない人は寒いと言った。ときおり、気まぐれに日差しが出ていながら雨粒が落ちてくるという、ちぐはぐな天候になった。夜には当たり前に冷え込んだ。

雨さえ降らなければ週末などは自転車乗りなどをしたいところなのだが、その週末の時間さえもがどこかに吹き飛んでいった、というのがこの11月だった。ただ、その失われた時間のすべてが悪いように使われたわけではなかった。すべてが良いように使われたわけでもなかった。

お菓子をつくるのに充てられた時間は良い時間なのか悪い時間なのか判然としなかった。

 

お菓子つくりはまあ他愛もない趣味の一つなのだが、人に食べてもらうことを前提にしてお菓子をつくっているのではなかった。つくることそのものを楽しむため、というのもちょっと違う。空いた時間の手慰みからはじめたもので、なんでも良かったのだ。しいていえば、なにかかっこいいものをつくりたかった(でもお菓子ってかっこいいか?)。とまあ、つくる動機は自分でも曖昧なのだが、とにかく人に食べさせたいという気持ちはあいにく持ち合わせていなかった。だったけど…。

つくれつくれとその連中は(また)言った。ほんとうかよ、と思った。ほんとうに食べたいと思っているのか、と。おもしろがって言っているだけじゃないか。まあいいや、と思った。今回も乗せられて(というか観念してというか)製作した。それも2台。

ラフランスをのっけて焼いた。ドライいちじくをラム酒に漬けたものを、アーモンドクリームに混ぜ込んで焼いた。いちじくを加えるのは、食感の幅が広がる感じで個人的には好ましかった。定番にしてもいいかもしれない。