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ミシェル・ウエルベック『地図と領土』

ミシェル・ウエルベックゴンクール賞(2010)受賞作『地図と領土』を読みました。
本作は現代美術家ジェド・マルタンの半生を描いた小説です。作中でジェドはミシュランの地図を素材に使った写真作品を制作、一躍アーティストとしての名を挙げる(そのときの展覧会タイトルが「地図は領土より興味深い」というもの)。しかしながら現代美術界の勝ち組としてマーケットに躍り出たところで、生来の孤独は解消されることもないし、そもそも解消しようともしていなくて、そこかしこに諦観と悲哀が際立っている。さりとて声高に孤独と絶望を叫ぶこともない、しみじみと淡々と資本主義的西洋文明の終焉を描く、といったおもむきでしょうか。現代アート関連の記述もいかにもありそうで面白い。
『地図と領土』はどちらかといえば静かな小説だけれども、ウエルベック先生といえば露悪な性描写のスキャンダラスな問題作で世間を騒がせているとの評判である。次も引き続き先生の作品を読みたい。

 

地図と領土 (ちくま文庫)

地図と領土 (ちくま文庫)