HAGIBLOG

自転車とお菓子作り

一日一日を大事に生きている

「一日一日を大事に生きている」と堀越二郎は言ったけれども彼がやっているのは仕事だけであったように見えた。私も一日一日を大事に生きたいと願っている。だが堀越のように仕事に打ち込めるとも思えない。そうかあ、だからダメなのかなあ、などと考えつつ、今週もまた、仕事をそそくさと切り上げてジムでエクササイズに励むのとDVDを見る日を交互に送った。ジムの方はあいかわらずで、なんということもない。今週観た映画は『風立ちぬ』(宮崎駿監督)と『第七の封印』(イングマール・ベルイマン監督)。読み終えた本は内田百閒の『御馳走帖』。

風立ちぬ』はよかったけれども、なんだか気味の悪い映画だなあと思った。「天才の天才による天才のための映画」と言っていたのを何かで見たけれど、まさにそんな感じで、嫌な感じだなあと思った。「美」のためならそれ以外のことなんか(人が死のうがなんだろうが)知ったこっちゃない、というのは、天才の天才たる所以なのかもしれないが、これはたいへんに残酷で、ぞっとさせられる。最後の方で、堀越二郎の集大成である零戦が出てくる場面がある。このシーンでの零戦の動きは、これまでの航空機とは一線を画す動きで、たいへん美しく感じさせるのだが、もちろん零戦というのはたいへんな殺戮機でもある。

『第七の封印』は、中世ヨーロッパの十字軍遠征から帰還した騎士が死神と生死をかけてチェスをするという、哲学的思索的かつ詩的味わいに富んだ映画である。純朴な旅芸人の夫婦がとってもいい。

御馳走帖』は前から少しずつ読んでいたのだが、内田百閒の文章がとてもいい。こういう、文人が食について綴っているのを読むのはけっこう好きである。おいしそうだし。特に内田百閒は食にこだわっているんだかいないんだか、好き勝手にやっている感じがとてもよかった。